この四半世紀,心理学の様々な分野で研究倫理についての議論が盛んに行なわれるようになり,倫理綱領や規程も充実してきた。しかし,研究倫理は研究実践との関わりのなかでの倫理であり,実践が変わると研究倫理として意識されるべきことも変わってくる。その意味で研究倫理は,時代とともに問い直され,再考されるべきものである。この10年を考えてみても,研究実践は様々な面で変化してきた。例えばCOVID-19によるパンデミックが心理学研究のテーマや方法等に影響したことは記憶に新しい。関連して急速に広がったオンラインでの調査研究においては,これまでの倫理指針ではカバーできない問題も生じている。また,研究活動を成果発表まで含むとしたら,益々強まる論文発表への圧力のもと個々の研究者が行う,論文執筆や投稿の過程にも精緻な倫理的なまなざしが向けられるようになってきた。本シンポジウムでは,研究倫理に関わって来られた専門の先生方から,心理学の各領域における研究倫理に関する最前線の議論を伺い,ポストコロナ時代とも称されるこれからの時代において理解しておくべき研究倫理について展望したい。
日本心理学会将来構想検討委員会太田 信夫丹野 義彦田島 信元野島 一彦岩﨑 庸男市川 伸一