山中博士らによる人工多能性幹細胞(iPS細胞)技術の確立は,再生医療の可能性を広げるのみならず,疾患研究において新たな研究プラットホームを開拓することで医学研究に多大な貢献をもたらすことが期待されている.すなわち,体細胞からゲノム情報を保持したまま多能性幹細胞を樹立できるため,特に遺伝性疾患においては研究対象細胞へと分化誘導することで,患者に特有の病因・病態を再現し詳細な解析を可能にする.一方で,T細胞から樹立するiPS細胞(T-iPS細胞)は,T細胞受容体の遺伝子再構成を保持したまま,再度T細胞へと分化誘導することでかつてないユニークな研究モデルを提供する.自己免疫疾患においては,現在のところ非特異的な免疫抑制による治療が主であるが,近年,病気の発症,増悪に関与する抗原特異的T細胞についての研究に進捗がみられ,より副作用の少ない抗原特異的な治療法の開発が期待されている.そこで本フォーラムにおいては,疾患特異的T細胞にiPS細胞技術を応用し行う難病研究について概説し,実際に進行中の自己免疫疾患における応用研究例に触れつつ,本スキームにおける問題点,今後の可能性等につき私見を交えて紹介する.