本稿では、日本語教育への示唆を得ることを目的に、「V-てもいい?」と「V-ていい?」を日本語母語話者がどのように使い分けているかを調査分析した。その際、ポライトネス理論(Brown& Levinson 1987)の考えを援用し、フェイス・リスク(Wx) と両形式の使用の関係を分析することで、使い分けの際の基準となるものや、両形式の性格を対人配慮の観点から探った。調査協力者は日本語母語話者の大学生117名で、談話完成テストを用いて調査を行った。その結果、フェイス・リスクが大きく見積もられる場面では「V-てもいい?」の使用傾向が強く、「V-ていい?」の使用は好まれないことがわかった。また、フェイス・リスクが小さく見積もられる場面では「V-ていい?」が好まれる傾向が確認できた。この結果は、「V-ていい?」と「V-てもいい?」で表せる対人配慮の距離感が異なることを示唆するものであると言えよう。両形式を比較すると、「V-てもいい?」は相手との心理的距離を保ち、相手の決定権に踏み込まない典型的なネガティブ・ポライトネスの性格を帯びているのに対し、「V-ていい?」はネガティブ・ポライトネスのストラテジーである点では変わらないが、心理的距離を近づけた、相手の了解を先取りするような表現手段としての性格を帯びていると考えられる。今回の分析結果を踏まえ、日本語教育へ示唆できることを2点述べた。まず、「V-ていい?」は会話などで「も」が省略された形式として扱われることが多いが、丁寧さと関係している可能性が示唆されており、「も」はあってもなくてもいいという運用情報のみに頼って多用すると、場合によっては失礼な印象を与える恐れがある。次に、「V-てもいい?」と「V-ていい?」の対人配慮における距離感の調整は、日本語学習者にとって必要とされる運用情報に値する可能性があるということを、韓国語と比較して示した。「も」の有無が対人配慮における距離感の調整に関わることへの理解によって、距離感の過剰な解釈に至ることなく、「V-ていい?」の了解求めのことわりを意図とした発話への適切な用い方にもつなげていくことができるのではないかと考えられる。