スピノザは自らの哲学が「真の哲学」であることを知っている。この自負は彼にとっての「哲学の基礎」である「共通概念」に支えられている。本論では、共通概念が何についての観念であるのか、つまり共通概念の対象の問題に焦点を当てる。共通概念の対象はこれまで多様な文脈(生物学的・政治学的など)で解釈されてきた。本論では、スピノザの初期テクストからの思考の軌道を押さえつつ、概念史的観点を取り入れた一つの解釈を提示する。本論全体の目論見としては、これまでのスピノザ研究で軽視される傾向のあった語「proportio」ないしスピノザのプロポーション概念に光を当てる必要性を主張すると同時に、「状況の幾何学」としてのスピノザの第二種認識理解を提案することである。