心理学研究の低い再現性が指摘されてから約10年が経過した。その原因の1つとして,斬新で有意な研究を好むジャーナルによる出版バイアスが指摘されてきた。個々の研究者が,そうしたジャーナルの嗜好に(科学的に不適切な形で)対応したことが,公刊される知見を歪めてきたという説明である。しかし再現性危機の責任はジャーナル編集者と査読者だけに求められるだろうか。そもそも心理学界には斬新で意外性のある有意な結果を重視する文化があり,編集者や査読者もそれに倣ってきただけかも知れない。この問題を検討するために,日本心理学会ならびに日本社会心理学会の年次大会における発表論文のメタ分析を実施した。両学会の年次大会では2段組1ページの発表論文の提出が求められるが(日心は2019年まで),事実上,発表前のピアレビューは行われていない。大会発表論文で報告されたp値の分布を見ることで,査読が存在しない状況下で,研究者による自発的な出版バイアスが生じてきたか検討する。対象は2013年と2018年の社会心理学系の実験研究とした。その他の詳細は https://osf.io/6mdx8 を参照されたい。
日本心理学会将来構想検討委員会太田 信夫丹野 義彦田島 信元野島 一彦岩﨑 庸男市川 伸一