観察する運動とは異なる運動を行う模倣抑制トレーニングによって,社会認知課題の成績や共感性が向上することが示されている。本研究では模倣抑制トレーニングが表情認知に及ぼす影響について検討した。参加者は共感性質問紙(IRI)を事前に回答(1回目)した後,7日間以上の間隔をあけて実験に参加した。実験は2日間連続で行い,1日目ではトレーニング(模倣抑制群20名と統制群20名)を実施した。2日目ではIRI(2回目)と表情認知課題を実施した。表情認知課題では表情模倣自由条件と表情模倣制限条件(箸が水平になるように歯で保持する)を設定した。先行研究と同様,模倣抑制群のIRIのスコアは,模倣抑制トレーニング後の2回目の測定で増加していた。また表情認知課題では,統制群で確認された表情模倣の制限による反応時間の遅延が,模倣抑制群では観察されなかった。これまでの研究から,表情模倣の阻害は表情認知課題の成績低下を引き起こすことが知られている。したがって本研究結果は,模倣抑制トレーニングが共感性を向上させるとともに,表情模倣の阻害が及ぼす表情認知への悪影響を軽減することを示していると考えられる。