心理臨床における実践知と心理科学研究における実証的知見は相反するものだろうか? 偽りの記憶論争を契機に,両者の溝は深まったかのように思われた。しかしながら,近年では,記憶の基礎メカニズムに関する研究,そして精神疾患群における異常についての研究が興隆し,それらの知見を基にした介入研究が進展を見せている。こうしたエビデンスに基づく介入法は従来の心理臨床実践を洗練させる可能性がある。「記憶心理学と臨床心理学のコラボレーション」シンポジウムでは,「記憶」を通じて心理臨床と心理科学の相互交流をはかってきた。第10回目となる今回は,第1回企画当初のシンポジウムの目的を振り返り,10余年が経過した現在の到達地点をマクロな視点で俯瞰する。指定討論者を交えて記憶と臨床に関する研究の行く末を議論し,今後の記憶研究と臨床実践を方向づけるシンポジウムとしたい。