近年、精神障害や問題行動の発生と維持に関わる要因として認知の偏り(cognitive biases)が注目されている。初期の抑うつに関する研究成果のほかに、今日では社交不安障害、強迫性障害、パニック障害、全搬性不安障害、さらには精神病(統合失調症)に特有な認知の偏りが報告されている。一方、近年の研究の急速な発展と拡大にともなって、その内容の混乱や重複が懸念される状況ともなっている。そこで、本研究ではこれまで認知の偏りとして提唱されいるものを包括的に測定する認知特性体験尺度を作成し、その因子構造と構成概念妥当陛の検討をおこなった。一般成人男女401名より得られたデータを分析したところ、認知特性体験尺度は「抑うつ認知特性」因子と「不安・念慮認知特性」因子の2因子構造が示唆された。さらに、それぞれの下位尺度に因子分析を実施したところ、前者については「否定的体験への取込まれ」、「両極端な他者・世界」、「失敗・危険の回避」の3因子構造、後者については「心気・被害念慮」、「敵意帰属」、「不安・心配への囚われj の3 因子構造が示唆された。尺度の構成概念妥当陛を検討するためにPOMS2日本語版との相関関係を検討した。その結果、収東的妥当性についてはおおむね支持されたものの、弁別的妥当陛については支持されなかった。