本研究は居場所に関する先行研究を居場所感の見地から概観し,今後の課題について考察したものである。まず本研究では,個人が「居場所がある」という感覚を規定する感情である「居場所感」を感じられる,物理的空間や対人関係,時間や状況を含む「場」を居場所と捉えた。そのような視座に立ち,居場所に関する研究を概観した結果,1)「個人が重視する居場所感の要素」により居場所を分類し,それぞれの効果について実証的に明らかにすること,2)居場所を「居場所がない」という体験の側面から操作的に定義し,居場所感の実態について明らかにすること,3)居場所感の要素を不足なく含む項目を用いて居場所の実態を明らかにすること,4)「居場所がない」という感覚の実態について明らかにすること,という4つの課題が挙げられた。また,教育の分野では小学生を対象にした居場所の議論が多くなされているにも関わらず,心理学における実証的研究が乏しいことも明らかとなった。それに伴い,5)児童期の居場所感の実態をより詳細に研究する必要性および,児童期の適応を規定する要因について,居場所感および「勤勉性(industry)」の観点から検討する必要性がさらに課題として見出された。