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矢部川における農業水利の歴史的考察 (2) : 河川災害と利水

Abstract

矢部川の農業水利に関して,大正時代以降の洪水による河川構造物の被害および農業水利について資料より調査した.矢部川は福岡県南部を西流し有明海に流入する,幹線流路延長58.3km,流域面積618km^2をもつ河川である.灌漑水田面積は約15,000haである.また,河川流量の安定度を示す河状係数は大きく,水資源利用上,不利な状況にある.前報に述べたとおり,流域は扇状地河川特有の乱流河川であり,洪水による被害が絶えなかった.昭和28年に起こった洪水に関する調査によれば,堤防破壊の原因として,1.堤防の漏水,2.堤防の欠陥,3.溢流が挙げられる.堤防の欠陥とは,急な法勾配,不良な築堤土質,不十分なつき固めがある.溢流は,堤防高の低い箇所のほか,流木が橋梁にかかり堰上げの起こった上流部で発生した.中下流域の大水田地帯での灌漑用水は矢部川を唯一の給源としていたため,流れを如何に合理的に配分するかについては古来より多大の努力が払われてきた.流域にある複数の水利団体のいずれかに属する井堰,井手,水門等の水利施設は大小あわせて数千個にのぼる.井堰は水利団体毎に異なる規則や旧藩時代からの古い水利慣行によって管理配水がなされ,ことに右岸地区の久留米藩と左岸地区の柳川藩による矢部川をめぐる紛争が絶えなかった.上流のダム完成後,水利問題は改善されつつあるが,過去の水利慣行には根強いものがあり無数に存在するクリークの利用とからんできわめて複雑である.本論文の作成にあたり,元九州大学大学院農学研究院助手舟越保氏に多大なご協力を戴いた.ここに謝意を表する.

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