本研究の目的は,保育におけるリトミックの意義を改めて検討することである。調査1では,「幼稚園教育要領」および「保育所保育指針」における「音楽」の捉え方を調査分析し,調査2では,我が国のリトミック先駆者(小林宗作,天野蝶,板野平)のダルクローズ・リトミックに対する見解と,彼らの教育観や指導法を整理した。そして,調査1,調査2を踏まえ,保育で捉えられている「音楽」とリトミックを比較・分析することによって,これまでのリトミックの踏襲する部分と軌道修正する部分を明らかにすることを試みた。その結果,保育における「音楽」は,自己表現およびコミュニケーションの手段であると捉えられていることがわかった。また,「音楽」を通した「子ども」と「保育者」/「音」/「イメージ」/「表現」の4つの視点を見出した。そして調査2では,先駆者の教育観は様々であるにもかかわらず,音楽の諸要素を身体の動きを通して理解する,という非常に音楽教育的な指導内容である点が共通していた。ダルクローズがリトミックにおいて「自己表現」や「コミュニケーション」といったキーワードをどのように捉えているのか追究し,調査1の4つの視点に対し,どのようなリトミック的アプローチが可能かということについて検討する必要がある。